旗頭歴50年!ベテラン旗持の歴史から見えてきた「子育てに役立つ教訓」とは

旗頭 インタビュー

皆さん、こんにちは! あんまーる編集長 ゆーりんちーです!

わたしの父は、沖縄三大綱引きのひとつ「那覇大綱挽」で旗持(はたもち)をしています。わたしにとってはその父の姿が幼いころから当たり前で、「なぜ旗持をしているのか?」「どうしてここまで続けられているのか?」などの疑問を持つことはありませんでした。

しかし今年、2023年は那覇大綱挽が4年ぶりに通常開催される特別な年。父と旗頭の歴史に迫るには、絶好のタイミングだと思いました。

そこで今回は、娘であるわたしが父にインタビューを実施! 父と旗頭の出会いから、これまでの主な出来事、長く続けられる理由まで語ってもらいました。
旗持としての父の歴史を紐解いていくと、そこには子育てにも役立つ教訓が……! ママ・パパもぜひご覧ください。

旗頭との出会いは中学生のころ

わたしの父の旗頭歴は約50年。その始まりは、いつどのようなきっかけだったのでしょうか?

ーーお父さんと那覇大綱挽の出会いは?

垣花実行委員会 二代目実行委員長の宮里吉次郎さんが、中学校に那覇大綱挽の太鼓隊(※1)を募集しに来たんだよね。「太鼓の打ち手が足りないからやってもらえませんか?」って。
そのときにお父さんは「やります!」って名乗り出て、宮里吉次郎さんから学校の中庭で太鼓の打ち方を習ったんだ。

お父さんが那覇大綱挽にはじめて参加したのは、たしか昭和47年の第2回。このときと翌年の第3回は太鼓隊として参加したよ。

※1 那覇大綱挽の旗頭行列の先頭には、各地域の太鼓隊・鉦子(鐘のような楽器)隊・ほら貝隊の姿もあり、独特なリズムで演奏しながら行進します。

ーー太鼓隊から始まったんだね。それをきっかけに旗頭に興味を持ったの?

家から練習場所が見えたんだけど、夜に旗頭の練習をしているのをたまたま見たんだ。それで興味を持って、昼は太鼓の練習をして、夜は旗持の練習を見学するようになったんだよね。
そのとき、先輩たちに「いずれは旗持やるはずだから一緒に練習やろう!」って誘われて、旗持の練習にも参加するようになったんだ。

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そして、昭和49年、高校1年生のときに旗持としてデビューしたよ。でも、やっぱり最初は1回くらいしか旗を持たせてもらえなかったかなぁ。

ーー高校生から旗持になれるんだ! 今もそういうケースってあるの?

今も高校生で旗持してる人はいるよ!
今は旗頭がある小学校・中学校が多いから、子どものうちから旗頭を身近に感じられるんだよね。あと、子どもたちを指導するのは那覇大綱挽に参加している旗持の人たちだから、小さいときから基礎ができるんだよ。

こういう交流をきっかけに、かつての自分のように「あのとき楽しかったからもっと大きな旗を持ちたい!」と祭りに参加してくれる子もいるから、そういうのはうれしいよね。

◯ 旗頭NEWS
2023年に開催される「第53回那覇大綱挽まつり」にあわせて、10月8日(日)の大綱挽式典で「旗頭のまち」を宣言すると、知念覚那覇市長が発表しました。
各地域で持ち手不足が顕在化していることから、小・中学校に指導員を派遣するほか、学校や地域の行事の演目となるような取り組みを目指し、旗頭の継承・発展を図るとのことです。

参照:那覇市旗頭のまち宣言|沖縄県
   那覇市「旗頭のまち」宣言へ 来月8日那覇大綱挽式典で 伝統文化継承図る|沖縄タイムス プラス

ーー旗持になったあとは、どういうキャリアを積んだの?

旗頭 インタビュー

旗持から始まって、20歳のころに「旗方(旗頭が倒れそうになったときに支える人)」になって、27〜28歳のころに「旗指揮(旗頭をあげる・下げるなどの指示を出したり旗持を指名したりする人)」になったかな。それから最初に所属した垣花実行委員会を卒業するまでは、ずっと旗指揮として祭りに参加してたよ。

地域によっては旗指揮になると旗指揮の仕事に専念することもあるけど、お父さんは旗指揮になったあとも旗を持ってたよ!

地域間交流のきっかけは2000年の九州・沖縄サミット

旗持から旗指揮までキャリアを積み、那覇大綱挽を中心にさまざまなイベントで旗頭に携わってきた父。そのなかでも、とくに印象に残っている出来事は何なのでしょうか?

ーー旗頭に関わるなかで、印象に残ってる出来事は?

2000年、お父さんが40歳のときに、九州・沖縄サミットが開催されたんだよね。このときサミットで旗頭をあげることが決まって、各地域からひとりずつ代表が選出されたんだけど、垣花実行委員会からはお父さんが選ばれたんだ。

サミットには、首里の「瑞雲(ずいうん)」と西の一番旗「凱歌(がいか)」の2つの旗頭が出て、瑞雲(ずいうん)は首里地区実行委員会のメンバー、凱歌は西一番旗頭実行委員会のメンバーと各地域の代表たちで持ったんだ。

じつは、このサミットが地域間交流のきっかけだったんだよね。
やっぱりどの地域も「自分たちが一番!」っていう誇りがあったから、あまり交流がなかったんだよ。那覇大綱挽はもともと「那覇四町大綱(なはゆまちじな)」っていう特別な行事だったんだけど、その当時は今よりもバチバチしてたみたいだから、その名残りが残ってたのかもしれないね。

でも、サミットに出るにあたって、各地域の代表同士で練習したり意見交換したりするようになって、徐々に交流が始まったんだ。「サミット」という共通の目的があったから、一致団結できたんだと思うよ。

ーーこれまでの常識が覆されたんだね。すごい! サミットが終わった後も交流は続いたの?

サミットの練習をするなかで「せっかく各地域の代表が集まったんだから何かイベントできないかな?」って話が出たんだけど、そのときに提案されたのが「沖縄全島旗頭フェスティバル(※2)」だよ。サミットの翌年、2001年にぎのわん海浜公園で第一回が開催されたんだ。

だから、サミットをきっかけに地域間交流の輪はどんどん広がったんだよ。

※2 沖縄県内の各地域から旗頭が出場し競い合うイベント。2007年度以降は会場を奥武山公園に移し、「琉球民族の祭典」というイベントの一部として開催された。

「お客さんを取り戻したい」という想いから生まれた工夫

旗頭といえば、やはり那覇大綱挽! 旗指揮としてチームをまとめる立場になった父は、旗頭のパフォーマンスにある工夫を取り入れたそうです。

ーー那覇大綱挽ってずっと人気のお祭りだったの?

旗頭 インタビュー

そうだね。基本的には毎年多くの人が来てたよ。

でも、お父さんが旗持として経験を積んでしばらく経ってからは、10代のときと比較すると観客が減ってたんだよね……。
だから「お客さんを取り戻したい!」と思って、旗を持ってる人以外のメンバーは座るっていう工夫を取り入れたんだ。そうすることで、お客さんは誰が旗を持っているのか確認しやすくなるから、より楽しめるかなと思ったんだよね。

ーーなるほど! たしかにみんな似たような衣装だし、いい工夫だね。それってお父さん考案なの?

お父さんが考案した……はず!(笑)
旗頭は団体演技でもあるけど個人演技でもあるから、「旗持を全面に出したい!(旗持を見てほしい)」っていう気持ちもあったなぁ。

あと、「旗を持ってる人以外は座る」っていう工夫はほかの地域ではやってなかったと思う。
何でかっていうと、旗持以外のメンバーが座るということは、その旗持に対して「旗を倒さない」という絶大な信頼が必要だからね。中途半端なチームワークじゃできないんだよ。だからその当時、お父さんは旗指揮だったんだけど、安心して旗持を任せられる人を指名してたよ。

翌年からは、ほかの地域も真似して旗持以外のメンバーは座るようになってたんじゃないかなぁ。

50年も続けられた理由は「好きだから」

約50年もの間、同じものを続けることは決して簡単ではありません。
では、なぜ父は旗頭・那覇大綱挽を続けられたのでしょうか?

ーー旗頭と約50年も関わってるけど、ここまで辞めずにいられた理由は?

やっぱり「旗頭が、那覇大綱挽が好きだから」かな。好きだからこそ、ここまで続けられてるんだと思うし、これからもなるべく関わっていきたいなと思う。

あと、シンプルに「祭りが好き」ってのもあるね!

ーー「祭りが好き」ってことなら、たとえば沖縄ならエイサーもあるのに何で旗頭なの?

エイサーって中部が有名でしょ?
南部に住んでたお父さんは、それこそ学生のころにエイサーを見たり触れたりする機会があまりなかったんだ。

そもそもエイサーって先祖供養のような意味合いがあって、今みたいなショーのようなものではないんだよね。もちろん、今も先祖をあの世へ送り出すためにやることもあるけど。
昔はお盆の時期にやる特別な踊りだったし、中部がメインだったから、お父さんにとってエイサーは身近ではなかったんだよ。

そんななか出会ったのが旗頭だったから、やっぱり「祭り=旗頭・那覇大綱挽」になるよね。

ーーこれからも旗頭を持ち続ける?

どうだろう。気持ちはあるけど体力的な問題があるよね……。
あと3年、65歳までかなぁ!(笑)

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でも、ありがたいことに「一緒にやろう」っていってくれる仲間がいるから、そういう声には応えていきたいし、自分もやっていきたいなと思うよ。

子ども那覇大綱挽に参加できる

じつは、筆者であるわたしは小学生・中学生のときに、当時父が所属していた垣花実行委員会のほら貝隊・太鼓隊として那覇大綱挽に参加したことがあります。

わたしの場合、父が旗持をしていたのでスムーズに参加できましたが、なかには「身近に那覇大綱挽の関係者がいないけど、子どもを参加させたい!」とお考えのママ・パパもいるでしょう。

そこで、父にほら貝隊・太鼓隊への参加方法についても聞いてみました!

ーーほら貝隊・太鼓隊として那覇大綱挽に参加したい子どもたちは、具体的にどうすればいいの?

お父さんが那覇大綱挽に出会ったときみたいに、今も小学校や中学校で小旗隊・ほら貝隊・太鼓隊の募集をしてると思うよ! もしくは、学校の掲示板に募集の貼り紙があるかもしれないね。

あとは、練習場に行って直接「やりたいです!」って伝えるのもアリかな。
那覇大綱挽の約1か月前から各地域の練習が始まるんだけど、練習場所って大体その地域の学校なんだよね。たとえば、垣花実行委員会は垣花小学校、若狭・松山旗頭実行委員会は若狭小学校で練習してるよ。

練習場所の近所に行けば、鉦子(鐘のような楽器)のカンカンって音や「サーサーサーサー」っていう掛け声が聞こえてくるはずだから、それを頼りに行ってみて「参加したいです!」って伝えてみるのもいいかもしれないね。

ただ、地域によっては参加条件が「区域内に住んでいること」だったりすることもあるし、人数制限もあるから、一度話を聞いてみるといいかも!

ーーなるほど。待つのではなく自分から参加の意思を伝えたほうがよさそうだね!

ほら貝隊・太鼓隊の経験から得たもの

最後に、ほら貝隊・太鼓隊として那覇大綱挽に参加した経験があるわたしから、その経験から得られるものについてお伝えします。

友達が増えた

小学生・中学生の場合、基本的に友達は学校内でしか作れません。もちろん、塾や学童でも友達は作れますが、メインはやはり学校ではないでしょうか?
その点、那覇大綱挽のほら貝隊・太鼓隊にはさまざまな学校の子どもたちがいます。毎日練習をするなかで他校の同級生やお兄ちゃん・お姉ちゃんとコミュニケーションを取るようになるので、それをきっかけに友達がどんどん増えるんです!

友達ができると練習がもっと楽しくなるし、那覇大綱挽への参加がより印象深い思い出として残ります。こうした経験を子どものうちからできたのは、とてもよかったなと思います。

大きな達成感を得られた

那覇大綱挽は毎年10月の3連休に開催されますが、その時期の沖縄の気温は夏並みに高いことがほとんど。また、ほら貝隊・太鼓隊も伝統的な衣装に身を包むため、参加者は常に汗だくです。
幼かったわたしは、那覇大綱挽当日、ほら貝を吹いて国際通りを歩くなか、何度も「暑い……、しんどいなぁ」と思いました。「帰りたい」と思ったこともあったかもしれません。

しかし、練習の成果を出すため、そして最後までやり遂げるために、暑さ・疲れに負けず一生懸命に取り組みました。その結果、綱引きを終えて帰るときには、大きな達成感を得られたんです!

「もう飽きた」「やっぱり楽しくない」と、部活や習い事を投げ出してしまうお子さんもいるでしょう。もしかするとそれは、達成感を得たことがないからかもしれません。
那覇大綱挽に参加すれば、きっとわたしと同じように「がんばった……!すごいぞ、自分!」というような大きな達成感を得られますよ。

「好き」の気持ちが行動力・発想力・継続力につながる

母は恥ずかしがり屋なので顔の公開は控えさせていただきます。

約50年もの間、「旗頭」と向き合い、一生懸命に楽しみながら取り組んできた父。

今回、父の話を聞いて感じたことは「“好き”は大きな原動力になる」ということです。
父の場合、旗頭に興味を持って自ら夜の練習場所へ行き(=行動力)、経験を積むなかで観客の減少に気づき、その状況を改善するため「旗持以外のメンバーは座る」という工夫を取り入れました(=発想力・行動力)。そして、中学生から還暦を越えるまで、旗頭を続けてきました(=継続力)。

好きという感情は、ここまで人を動かし、人生における大きな財産を与えてくれます。
そのため、もしお子さんが何かに夢中だったり、好きな素振りを見せていたりするのであれば、親としてその気持ちを尊重してあげるとよいでしょう。

第53回那覇大綱挽
開催日:2023年10月8日(日)
旗頭行列:11:30~14:00(国際通り
那覇大綱挽:14:30〜17:00(国道58号線 久茂地交差点)

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ゆーりんちー

食べること🍙 が大好きなあんまーるの編集長。
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