「児童扶養手当」をご存じでしょうか?
児童扶養手当は、ひとり親家庭を対象とした手当です。令和7年4月から所得の限度額や支給額が引き上げられ、支援が拡充されているため、受給できれば家計の大きな助けとなるでしょう。
しかし、なかには「離婚したら必ずもらえるの?」「手当はいくらもらえる?」との疑問から、受給に向けて動けずにいる方もいるのではないでしょうか。
そこで今回は、児童扶養手当の概要や申請方法、令和7年4月の変更点と支給額などをご紹介します。シングルで子育てをしているママ・パパはぜひチェックしてください。
もくじ
児童扶養手当とは
児童扶養手当とは、父母の離婚や死別などの理由で、両親ふたりと生活を共にできない児童がいる家庭に支給される手当のことです。児童の福祉の推進やひとり親家庭の生活の安定・自立の促進を目的としています。
児童手当との違いは?
児童扶養手当と児童手当は、名称は似ていますがまったく別の手当です。
児童扶養手当は受給の対象がひとり親世帯に限定されているのに対し、児童手当は国内のほとんどの子どもが受給の対象となる点に大きな違いがあります。
児童手当は、子育て世帯の生活の安定と児童の健やかな成長を目的とした手当です。日本国内に住所がある児童の養育者に支給され、18歳の年度末まで支給されます。2024年度からは所得制限が撤廃され、保護者の所得を問わず児童手当を受給できるようになりました。
児童手当は受給の条件にひとり親家庭であるかどうかを問いません。父母が離婚していたり別居中だったりする場合は、児童と同居するほうに優先的に支給されます。
なお、それぞれの条件を満たせば、児童扶養手当と児童手当を同時に受給することもできます。
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児童扶養手当の受給対象・要件
児童扶養手当を受けられる対象や要件は以下のとおりです。
支給対象者
児童扶養手当の対象者は、18歳の年度末までを上限とした児童のうち、要件を満たす児童を養育する母子家庭の母または父子家庭の父です。父母が児童を養育していない場合は、祖父母など父母に代わって養育している方が対象となります。
18歳の年度末までという期間は、児童の高校卒業までを想定されています。児童に障害がある場合は、児童が20歳になる月まで手当を受けられます。
支給要件
児童扶養手当は、対象となる児童が以下のいずれかに当てはまる場合に支給されます。
・父母が離婚後、父(母)と生計を同じくしていない ・父(母)が死亡した ・父(母)が重度の障害にある ・父(母)の生死が不明 ・父(母)から引き続き1年以上遺棄されている ・父(母)からのDV(家庭内暴力)により裁判所から保護命令を受けた ・父(母)が法令により引き続き1年以上拘禁されている ・婚姻によらないで生まれ、父(母)と生計を同じくしていない |
「父(母)から遺棄されている」とは、父または母が同居せず、児童の養育義務を放棄している状態を意味します。単に別居しているだけでは対象とならないため、注意が必要です。
ひとり親家庭でも対象外になる場合がある
上記の要件を満たしていても、以下のようなときは、児童扶養手当を受けることはできません。
・児童や養育者が日本国内に住所を持たない ・児童が児童福祉施設に入所している、または里親に委託されている ・養育する母(父)が配偶者と生計を同じくしている(養育者に重度の障害がある場合を除く) ・申請者または扶養義務者の所得が一定額以上である |
「養育する母(父)が配偶者と生計を同じくしている」とは、養育者が児童の父母以外の方と法律上婚姻関係にある場合や住民票の住所が同じ場合、つまり再婚・事実婚の状態を意味します。定期的な訪問や生活費の補助がある場合も、内縁関係が認められれば児童扶養手当の対象外となります。
また、遺族年金や老齢年金などの公的年金を受給しているときも、児童扶養手当を受給できなかったり支給額が減額となったりすることがあります。
児童扶養手当は所得制限があります

児童扶養手当の受給額は対象者の前年の所得に応じて決まり、手当の全額を支給する「全部支給」と一部のみを支給する「一部支給」があります。
対象者の前年の所得が一定額を上回る場合には、ほかの要件を満たしていても児童扶養手当の支給対象外となります。いわゆる所得制限です。
令和6年11月からは、法律の改正により所得の限度額が引き上げられ、受給できる範囲が拡大されました。
児童扶養手当の支給の限度額は以下のとおりです。
なお、70歳以上や16歳以上23歳未満の扶養親族がいる場合は、表の金額にさらに加算される場合があります。
扶養親族の数 | 全部支給の範囲 となる所得 | 一部支給の範囲 となる所得 | 配偶者および扶養義務者、孤児等の 養育者の所得 |
0人 | 690,000円未満 | 左の金額以上 2,080,000円未満 | 2,360,000円未満 |
1人 | 1,070,000円未満 | 左の金額以上 2,460,000円未満 | 2,740,000円未満 |
2人 | 1,450,000円未満 | 左の金額以上 2,840,000円未満 | 3,120,000円未満 |
3人 | 1,830,000円未満 | 左の金額以上 3,220,000円未満 | 3,500,000円未満 |
4人 | 2,210,000円未満 | 左の金額以上 3,600,000円未満 | 3,880,000円未満 |
5人 | 2,590,000円未満 | 左の金額以上 3,980,000円未満 | 4,260,000円未満 |
6人以上 (1人増えるごとに加算) | 上記金額に380,000円 加算 | 上記金額に380,000円 加算 | 上記金額に380,000円 加算 |
所得と養育費の合計から控除額を差し引いた金額が上記の表の限度額未満であれば、児童扶養手当を受給できるということになります。限度額を超えて支給の対象外となった場合は、その年度の11月から翌年10月までの手当の支給が停止されます。
児童扶養手当の受給額は?
児童扶養手当の受給額は、令和7年4月より増額となりました。同時に、これまで加算額が少なくなっていた3人目以降の支給額が、2人目と同額まで引き上げられています。シングルで子育て中のママ・パパにとっては朗報ですね。
令和7年4月以降の支給額は、月額で以下のとおりです。
全部支給 | 一部支給 | |
児童扶養手当の月額 | 46,690円 | 46,680円~11,010円 |
2人目以降の加算額 | 11,030円 | 11,020円~5,520円 |
なお、一部支給の金額は対象者の前年の所得額に応じて決まります。離婚した父または母から養育費をもらっている場合は、養育費の8割も加算したうえで算定されます。
児童扶養手当の受給はいつ?
児童扶養手当は年6回、1月・3月・5月・7月・9月・11月の奇数月に支払われます。1度に支払われる額は支払われた月の前月までの2か月分です。
支給日は原則11日で、土・日・祝日にあたるときはその直前の金融機関の営業日に支払われます。
児童扶養手当の申請方法

児童扶養手当を受給するには、お住まいの市町村窓口で申請を行う必要があります。市町村や該当する要件によって必要書類や申請方法が異なる場合もあるため、まずは担当窓口へ相談してみることをおすすめします。
一般的には以下の書類を用意しておくと安心です。
・申請者と児童の戸籍謄本(原本) ・申請者名義の通帳やキャッシュカードなど ・印鑑 ・申請者と児童のマイナンバーがわかる書類 ・申請者の本人確認書類 |
必要書類をそろえたら、窓口で「児童扶養手当認定請求書」を記入し、あわせて提出します。自治体による審査を経て認定を受けられれば、申請の翌月以降に児童扶養手当の受給が開始されます。
以後、手当の受給を継続するには引き続き要件を満たしていることを確認する「現況届」を毎年提出する必要があります。公的年金の受給や扶養する児童の増減など、支給額に影響する変化があった場合も、その都度届け出る必要があります。
児童扶養手当の一部支給停止措置とは?
児童扶養手当は、原則として受給開始から5年が経過すると一部支給停止措置の対象となり、手当の受給額が2分の1に減額される可能性があります。
児童扶養手当は、ひとり親家庭の自立の促進を目的としています。そのため、養育者が手当を受給するために働かなくなるという状況は望ましくありません。
そこで、養育者や子どもの障害・疾病などやむをえない事情がないにもかかわらず、経済的自立に向けた活動を行っていない場合は、5年をめどに手当額の2分の1を支給停止する決まりとなっています。
一部支給停止措置の対象となるのは、「受給を開始した月の初日から5年が経過したとき」または
「支給要件に該当するようになった月の初日から7年が経過したとき」のいずれか早く迎えたほうです。
ただし、手当の申請時に児童が3歳未満だった場合は、児童が8歳になる月から対象となります。
一部支給停止措置の適用を除外するには?
一部支給停止措置の対象となっても、就労している場合や就職活動中の場合は、手続きをすれば実際に措置が講じられることはありません。必要書類を提出することで、今までと同額を受給できます。
・就労している場合 ・求職活動など自立のための活動をしている場合 ・心身の障害がある場合 ・持病などにより就業が困難な場合 ・受給者の監護する児童・親族を介護する必要があり、就業が困難な場合 |
上記の条件に当てはまる場合は市町村の担当窓口に必要書類を提出し、一部支給停止の適用を除外してもらいましょう。以下に該当していても、届出がなければ一部支給停止措置を実行されてしまうため注意が必要です。その後も一部支給停止とならないためには、現況届とあわせて毎年書類を提出する必要があります。
再婚すると児童扶養手当はどうなる?
ひとり親の受給者が再婚したときをはじめ、児童扶養手当の要件を満たさなくなった場合は受給を続けることはできません。以下のようなときにはすぐに市町村の担当窓口へ届け出る必要があります。
・ひとり親の受給者が婚姻したとき
・受給者が異性と同居したとき(頻繁に訪問し定期的な生活費の補助を受けている場合を含む)
・対象児童を養育・監護しなくなったとき(児童養護施設の入所・里親への委託・児童が婚姻した場合を含む)
・受給者または対象児童が死亡したとき
・児童を遺棄していた父(母)から連絡や仕送りなどがあり、遺棄の状態でなくなったとき。
・拘禁されていた父(母)が出所したとき
・児童が18歳となり最初に迎える3月31日、又は一定の障害のある児童が20歳を迎えたとき
・そのほか、受給要件に該当しなくなったとき
なお、届出をせずに不正に受給を続けていた場合、受給資格がなくなった月の翌月以降の手当の全額を返還しなければなりません。
ひとり親家庭は児童扶養手当を有効活用しよう
児童扶養手当は、18歳以下の子どもを育てるひとり親家庭を対象とした制度です。
要件や所得の条件を満たせば受給できるため、シングルで子育て中の方は受給の対象かどうかを確認してみてください。
ひとりで子どもを育てていくのは経済的にも負担が大きいものです。児童扶養手当を活用して生活や教育費に役立ててくださいね。
なお、児童扶養手当を受給するには、市町村役場の窓口にて申請が必要です。市町村や該当する要件によって必要書類や申請方法が異なる場合もあるため、まずは担当窓口へ相談してみてください。
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