「教育虐待」という言葉を聞いたことがありますか?
教育虐待とは、限度を超えて子どもに勉強や習い事を強いることを意味します。
我が子の教育に熱心であることは、本来とても素晴らしいことです。しかし、行き過ぎてしまうとかえって子どもに悪い影響を与えてしまうこともあります。
我が子への熱心な指導が教育虐待へエスカレートしてしまわないよう、親としての言動を振り返ることが大切です。
今回は、教育虐待の典型例や子どもに与える影響、教育虐待を防ぐためのポイントなどをご紹介します。お子さんへの教育のあり方を考える際には、ぜひ参考にしてみてください。
教育虐待とは?
教育虐待とは、子どもの限度を超えて勉強をさせることです。勉強には、机に向かう学習だけでなくスポーツや音楽、習い事なども含まれます。
行き過ぎた教育によって親子関係が歪んでしまうケースもあり、最近ではニュースでも多く取り上げられるようになりました。
日本の法律では、児童虐待は「身体的虐待」「性的虐待」「ネグレクト」「心理的虐待」の4種類に分類されます。子どもに対して「暴力を振るう」「部屋に閉じ込める」「食事を与えない」などの行為は、理由に関わらず虐待です。
教育虐待は、たとえば「テストで100点を取れなかったから殴った」など、行きすぎた教育の末に虐待行為に及ぶことも含まれます。ただし、暴力がなくても親の熱心な指導が子どもの心身に悪い影響を与えている場合は、教育虐待にあたります。
教育熱心と紙一重!?教育虐待の基準とは
虐待という強い言葉が使われているため、教育虐待はごく一部の親がすることのように感じられるかもしれません。しかし、教育虐待は教育熱心と紙一重であり、親なら誰もがやってしまうおそれがあります。
教育虐待の明確な基準はありませんが、重要なのは子どもの意思が尊重されているかどうかです。
教育虐待をする親は、無自覚なことが多いといわれています。「将来のため」「よい成績のため」とよかれと思ってしたことであっても、子どもの気持ちを無視した状態であれば、教育虐待に陥っているかもしれません。
「自分もやっているかもしれない」という意識で、親が子どもへの言動を振り返ることが大切です。
教育虐待の典型例とは?
では、具体的にはどのようなケースが教育虐待にあたるのでしょうか。教育虐待の典型例には、以下のようなケースが挙げられます。
子どものスケジュールを厳しく管理・監視する
たとえば「夜遅くまで勉強させる」「友達と遊ぶことを禁止する」「勉強しているか見張り続ける」というように、親が子どもを過度に管理・監視することは教育虐待の一例です。子どもの自主性を尊重せず、親が子どもをコントロールしようとする場合に陥りやすいケースといえます。
勝手に将来の進路を決める
「将来は必ず医者にさせる」「名門校以外の受験は認めない」など、子どもの希望を無視して親が勝手に将来の進路を決めることも、教育虐待にあたります。
親と同じ道を進んでほしいと強く願う場合や、親が叶えられなかった夢を子どもに託そうとする場合に起こりやすくなります。
物にあたる、大声で怒鳴る
直接の暴力がなくても、勉強がうまくいかないからといって机や壁を叩いたり、大声を上げたりすることは教育虐待にあたります。怒りや苛立ちを相手や物にぶつけることは、大人同士であっても望ましくありません。親に心の余裕がなく、自分で感情を制御できないときには注意が必要です。
子どもを傷つける発言をする
「こんな簡単なこともできないなんて」「うちの子とは思えない」「ほかの子はできるのに」など、子どもの自尊心を傷つけ、自己肯定感を下げるような発言も、教育虐待の一例です。子ども自身の努力や成長を評価せず、結果ばかりを気にしていると、こうした発言をしてしまいやすくなります。
教育虐待が子どもに与える影響とは

教育虐待を受けた子どもには、以下のような影響があると考えられます。
勉強への興味・意欲がなくなる
親に勉強を強いられることで、子どもは勉強や習い事へのモチベーションを失い、嫌いになってしまうことがあります。プレッシャーが集中力や記憶力を低下させ、成績が上がりにくくなるという悪循環にもつながります。
新しいことを始めたり、何かに挑戦したりすることへの興味や意欲も薄れてしまうかもしれません。
自己肯定感が下がる
親に認められないことで、子どもは自分に自信が持てなくなってしまいます。自分のことを自分で決められない、他人の評価に振り回されるなどの理由から、物事に前向きに取り組むことが難しくなってしまいます。
コミュニケーションが苦手になる
教育虐待が子どもの自信をなくすことで、他者とのコミュニケーションがうまくいかず、対人関係を築けなくなることもあります。親子関係だけでなく、友人との関係もうまくいかなくなり、学校生活にも影響を及ぼすかもしれません。
ふさぎ込む、または反抗的になる
過度な教育の反動で、学校に行かずふさぎ込む子もいれば、反抗的な態度を取ったり犯罪に手を染めたりする子もいます。いずれも教育虐待からの現実逃避やSOSのサインとして現れる行動と考えられています。
身体症状が出る
教育虐待による心理的な不安やストレスから、体調を崩してしまうことも少なくありません。睡眠や食事がうまくとれない、毛が抜ける、お腹を下す、吐くなどの身体症状が現れるほか、うつ病や不安障害などを発症してしまう可能性もあります。
不登校やいじめ、自傷行為に発展することも
上記のような教育虐待による影響が、学校生活でのトラブルや子どもが自分自身を追い詰めることにつながる場合もあります。学校ではいじめの対象となってしまうこともあれば、家庭でのストレスのはけ口として他者をいじめ、加害者になることもあるかもしれません。
また、苦痛から逃れるために自分の命を危険に晒してしまうことも考えられます。深刻な事態になる前に、親が自分を省みることが大切です。
教育虐待を防ぐためにできること

教育虐待を防ぎ、子どもが楽しく前向きに勉強するために、以下の点に気をつけましょう。
自分の行動を振り返る
上述したような教育虐待の例を見て、自分が同じような行動をしていないか振り返るようにしましょう。
子どもの未来を思ってよい教育を受けさせたいと思うこと自体は、決して悪いことではありません。
その上で「行き過ぎていないか」「子どもの負担になっていないか」という視点を取り入れることが大切です。ママ・パパでお互いの言動を振り返り、話し合う機会を作るのもよいでしょう。
子どものことを決めつけない
子どもの幸せを願うのは親として当然のことです。しかし、「立派な職業に就かなければ」「偏差値の高い学校に行かなければ」「親の言うとおりにさせなければ」というように、必ずこうしなければ幸せになれないと考えるのは、親の決めつけです。自分の子育てや価値観を今一度見直してみましょう。
また、自分の教育の仕方が正しいと決めつけることも、教育虐待につながる原因のひとつです。子どもの立場に立って、本当に子どものためになっているのかを振り返ることが大切です。
子どもの声に耳を傾け、気持ちを尊重する
教育虐待を防ぐには、子どもの声に耳を傾けて否定せず受け入れましょう。子どもの気持ちを尊重することが重要です。
たとえば「勉強が嫌だ」といわれたときに、なぜ嫌なのか、どうしたら楽しく取り組めるかを一緒に考えることで、子どもの気持ちを汲んだ対応ができます。結果的に子どもの自主性や意欲につながり、強制するよりもよい結果が得られるかもしれません。
息抜きや遊びを取り入れる
大人でも働き詰めではストレスが溜まり、パフォーマンスが下がります。それと同じように、子どもにも息抜きや遊びの時間が必要です。子どもの自由時間を十分に確保し、リフレッシュできる機会を作りましょう。
親自身もケアする
親がコンプレックスを持っていると、教育虐待につながることが多いといわれています。ほかの子どもと比べて焦る、学歴を過剰に気にするなど、教育虐待に陥りそうな要因が自分の中に潜んでいないか、自己分析することも大切です。親が心の余裕を持って、ありのままの子どもを認めてあげる姿勢を保ちましょう。
教育虐待を知って子どもの声に耳を傾けよう
教育虐待は、親が過度に期待してしまうあまり、子どもに勉強を強制する状態を指します。誰でもしてしまう可能性があることを知って、いま一度自分の教育のあり方を見直しましょう。そして、子どもの声に耳を傾け、子どもの意思を尊重することも意識しましょう。
勉強ができてもできなくても、大切な我が子であることに変わりはないはずです。子どもが楽しく前向きに勉強に取り組むにはどうしたらよいか、この機会にママ・パパ、そして子どもと一緒に話し合ってみてはいかがでしょうか?
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